日本人の美意識の中に、視覚的な美を尊ぶ赤の時代と、色彩を拒絶する美意識である黒の時代、つまり「赤と黒」の美意識が常に二重に流れていたと言えます。『古今集』は赤の美意識を持つものの一つと考えられますし、黒の美意識はわび・さびにつながっていくものです。本来、否定的な感情を表すわび・さびは、やがて静や寂の境地を表わすようになり、近世には茶の湯や俳諧の世界で美を表す肯定的な美意識へと転換していきます。
生形貴重氏
うぶかた・たかしげ
大谷女子短期大学教授
肩書きは開講当時のものです